ヴィンテージのコンディションについて

ペイントロスについて

北欧食器は基本的に「転写」という技術で絵柄が施されています。一度窯で焼いた無地の陶器に転写紙(シールのようなもの)を貼り付けています。陶器そのものを焼くことを「本焼成」と呼び、また絵付け師が筆で一つ一つ絵柄を施すことを上絵付けと言います。一部の食器は転写ではなく絵付け師が筆で装飾を描く「ハンドペイント」が行われます。ハンドペイントでは色素を定着させるため器を低温で再焼成しています。

Transcription
写真:転写作業

特に「ペイントロス」と呼ばれる現象は、転写紙を用いた装飾に発生しやすいです。もともとの転写紙が脆弱であったり、曲がって貼り付けられていたり、圧着が十分でないといった様々な要因で一部だけ剥がれるという現象が起きます。長年の家庭での使用によっても頻繁に擦れる箇所がハゲていくという経年によるペイントロスもあります。

また、グスタフスベリなどのファイアンス焼きは絵付けを施してから本焼成を行うという古代からの技法を用いたものです。絵柄に欠けが見られる場合、ペイントロスに留まらず本体そのものもえぐれている場合がほとんどです。つまり「ペイントロス」と呼ぶ場合は絵柄のみの損耗であり、陶器本体は無事とも言えます。

 

カトラリー跡について

カトラリーとはナイフ、フォーク、スプーンなど食卓用の金属製品の総称です。日本の生活様式では箸など木製の道具を使うことが多いですが、北欧では食卓で食事を口に運ぶための道具は基本的にすべて金属製です。そのため、陶器の表面は絶えず金属とぶつかることになります。長年の使用によって、こうしたダメージは「カトラリー跡」として表面化していきます。通常、光に透かさないと見えない程度のものですが、使用感のある食器ほど細長い筋が中央付近に観察されます。

カトラリー跡

写真:光に透かすと見えるカトラリー跡(プレート中央)

 

貫入(かんにゅう)について

陶磁器は原材料である陶土(とうど)に釉薬(ゆうやく)という植物の灰からなるコーディング液を塗り、高温で焼成されて作られます。釉薬は高温になると原料に含まれた珪石(シリカ)と呼ばれる成分が溶け出しガラス質になります。このガラスが陶磁器の全体を薄く覆うことで、透明で硬いコーディングが施され、食器を汚れから守ります。およそ1200度という高温で熱するため、冷却する過程での温度管理が非常に難しく、急激に冷やしてしまうと釉薬にクモの巣状のヒビが入ることがあります。本体の陶土そのものには問題なくても、釉薬にだけクラックが入った状態を貫入(かんにゅう)と呼びます。

写真:色素の定着した貫入

貫入は陶土本体へと水分の侵入を許してしまうため、白い器に貫入が入っている場合、コーヒーなど濃い色の液体を注ぐと染みとなり二度と色が取れることはありません。使用そのものには問題はなくても、器の美観は損なわれることになります。

一方で、例えば日本の茶の湯の世界においては、貫入のある茶碗に抹茶が入り込むことであじわいを生み、それを長年続けることで「器を育てる」という価値観もあります。貫入は必ずしも陶磁器としての欠陥ではなく、むしろ捉え方や考え方によっては器を美しく見せるという美意識にもつながっています。

貫入


写真:抹茶茶碗の貫入

明確に汚れと思えるものは別ですが、貫入も場合によっては一つの味わいとして成立することがあるため、貫入があるというだけでは良い悪いという価値判断はできないこともあります。

 

支柱跡について

陶磁器の窯焼きの方法には「一枚焼き」と「重ね焼き」という二つの方法があります。一枚焼きとは、窯の焼成棚に陶磁器を一つひとつ据えて、お互いが触れないように並べて焼く方法です。

faience one piece kiln
写真:一枚焼きのプレート、釉薬がかからない高台にのみ赤土が見えている

一方で重ね焼きとは、省スペースと大量生産のために、一度にお皿の上にお皿を乗せ、更にその上にも何枚も同様の食器を重ねていく、という手法です。縦に重ねられた一枚一枚の焼き物の間には、焼台、炉台、日本ではトチンなどと呼ばれる支柱を挟み込みます。窯焼きのときに焼台に触れる箇所には釉薬がかからないため、完成した製品には重ね焼きの支柱跡である凹みが残ります。ヴィンテージの北欧食器には必ずと言っていいほどこの支柱跡が見られます。

kiln support marks

写真:支柱が当たる部分に陶土がのぞく

支柱跡は製品の欠陥やキズではなく、製造手法によって最初から付いているものです。ヴィンテージ商品の場合、内部の陶土がむき出しになり茶色く見える場合もありますが、汚れではありません。製品の一つの特徴としてご理解ください。

商品のコンディションの評価については下記のページをご覧ください。

〈コンディション評価について〉