当店では珍しい北欧ヴィンテージアイテムを取り扱っています。他にはない品揃えに加えて、エピソードや来歴を交えてその魅力にお伝えしたいと思います。今日は最近入荷したリサ・ラーソンの数量限定の作品をご紹介します。
リサ・ラーソンは、北欧スウェーデンを代表する現代陶芸家の一人です。世界的に有名なアーティストですが、日本でもここ20年で徐々に人気が出てきたファン層が多いアーティストです。
そのデフォルメの仕方が非常に愛らしく、リサ・ラーソンの手にかかると獰猛なライオンのような生き物でも、可愛らしい飼い猫のような姿に生まれ変わります。
くわしいリサ・ラーソンの来歴についてはこちらのページをご覧ください♪
今回は「馬(Häst)」というシンプルな名前の作品が入荷しました。
(写真:リサ・ラーソンの馬(Häst)の陶板)
リサ・ラーソンは「小さな動物園(Lilla Zoo)」というシリーズでも同名の陶器像を製作していますが、こちらは陶板となります。
陶板とは壁飾りなどに使用する比較的平らで絵画的な陶器製品です。
素材は炻器(ストーンウェア)で、陶器と磁器の両者のメリットをあわせた肉厚で重厚感もあり水弾きもあり頑丈な焼き物です。
リサ・ラーソン作品の陶板はほぼ全てストーンウェア製となります。
小さな動物園シリーズでは野生の馬と思われるデザインですが、こちらの作品の馬は鞍があり、手綱があり、騎馬隊の馬をモチーフにしていると思います。
(写真:スウェーデンの首都ストックホルムの騎馬隊)
凛とした瞳は涼やかで、大きな体は余計な色を加えず深緑の釉薬で塗られています。
足元にはリサ・ラーソンの署名であるLISA L刻印がなされており、背面には限定版であることが分かるように150/◯◯という数字が書かれています。
スラッシュは分子と分母を区切るものですが、リサ・ラーソンの限定陶板では製作数が前に来ます。この場合は150が先に書かれて、製作された順番が後に表記されます。つまりスラッシュは分数の表記ではなく単に数字を区切るための記号です。
ところで、これもリサ・ラーソンの数量限定アイテムによく見られる特徴ですが、150点限定といっても、個体差にかなりばらつきがあり、同じ色味のものはほぼ存在していません。
(写真:白を基調とした同作品。釉薬の色が大きく異なる)
本作に関しては釉薬の色が変化が白いものと青い釉薬のものが同程度作られたようです。
製作していく過程で路線変更をおこなったり、自由に表現を変えていたことが伺われます。
そのため「150点の同じもの」ではなく「同じデザインだが細部が微妙に異なる150点の陶板」と理解したほうが良いかもしれません。
そもそも北欧にはきっちりと同じものを作る文化がありません。
サインの仕方や数字の表示やその場所も作品のどこかにはありますが、とくに法則性はなく、釉薬の色合いなどは同じものは2つとしてありません。
日本的な目線で見るとばらつきが感じられることも、北欧風に捉えると、これらは「全て同じもの」という扱いです。
釉薬が青くても白くても150点限定で製作された同じ陶板なのです。
北欧は良くも悪くも、過度な完璧主義に陥らないことが文化の根底にあるように感じます。
なお、これも古い時代のリサ・ラーソン作品の常なのですが、150/◯◯や100/◯◯などの限定数を表す表記は基本的に焼き上がった後の作品に、油性マジックのようなもので書かれています。
リサ・ラーソン本人のサインも通常は刻印が多いですが、本人の自署がマジックのようなもので書かれているパターンがあります。
そのため、なんと、強くこすったら消えてしまうのです。
マジックで書かれている、というと本物?という気もしますが、本物でもそのくらいの良い加減さで作られているのです。
これもまた良くも悪くも北欧らしさだと思います。
古いリサ・ラーソン作品では数字やサインには絶対にお触れになられないことをおすすめいたします。