1.マグカップ一個9,000円
グスタフスベリ(Gustavsberg)は約200年の歴史があるスウェーデンの陶器メーカーです。いまでも伝統的な製造方法を守りスウェーデン製の食器を製造しています。今日はなぜグスタフスベリの北欧食器は高いのか、その理由を解説します。
グスタフスベリ社の歴史についてはこちらの記事をどうぞ→『すこしだけグスタフスベリの歴史の話』
グスタフスベリのマグカップは約9,000円します。同じ品質のものでも為替相場に非常に影響されます。円高のときは8,000円のこともありますが、1万円で売られていることも珍しくありません。もちろんカップそのものは同じものです。
写真:グスタフスベリの代表的な作品Berså(ベルサ、べショー、ベルソー)
2.「グスタフさんの丘の土」で出来た食器
グスタフスベリ製品はスウェーデンの首都ストックホルム郊外にある、グスタフスベリという地名の工場で今でも作られています。
19世紀に会社が作られたときに創業者「グスタフ」さんが工場を作った場所の名前からグスタフスベリと呼ばれています。「ベリ」とはスウェーデン語で「丘」という意味で、ろくろを回して作る陶器の材料にぴったりな土が取れる丘があったことに由来しています。つまりグスタフスベリとは「グスタフさんの丘」という意味です。
(写真:19世紀のグスタフスベリの社屋)
3.ビッグマック指数とスウェーデンの物価の高さ
それではグスタフスベリ製品が高価格なのはどういった理由からそうなるのでしょうか?今回はマクドナルドを例に考えてみます。経済学では「ビックマック指数」という各国の物価と為替レートを表すバロメーターがあります。
マクドナルドは基本的に世界中に店舗を構えています。そして世界のどの店舗でも同じ水準のサービスを提供しています。そのため、もしもハンバーガーの店頭価格が違う場合は、その国の物価や生活費の高かさや安さを反映していることを意味しています。これが「ビッグマック指数」です。
2023年のビッグマック指数では、スウェーデンは世界で4番目にビッグマックが高価な国となっています。日本は41番目です。スウェーデンでは単品のビッグマックは770円します。日本は地域にもよりますが400〜500円です。同じ商品でもスウェーデンは日本よりも約1.75倍高いのです。これが国全体の物価や生活費の高さを反映しています。
4.物価が高い=食器も高い
グスタフスベリの北欧食器が高い理由は、スウェーデンの物価の高いためです。さらに、グスタフスベリが他の北欧メーカーとは異なり、生産拠点を外国に移転していない点も重要です。これはブランドが伝統や品質を重視するためですが、結果的にこの価値観が生産コストを上昇させ、製品価格を高くすることにつながっています。
これがグスタフスベリのカップの金額にそのまま反映されています。スウェーデンには最低賃金という制度はありませんが、そもそも物価がとても高い国なので、人件費や資材代などが高く付きます。陶器を窯で焼くための燃料費も同じです。
さらに、スウェーデンの消費税は25%です。つまり1万円のカップを購入すると、税込みで1万2,500円になります(購入方法によっては免税になります)。
そしてそれを日本に輸入すると、更に輸送費がかかるため、スウェーデンで買っても高いものは日本で購入しようとするともっと高くなります。物価、賃金、税、そして国際便の輸送費も合わせると、かなり割高となるわけです。
5.純スウェーデン製の食器のグスタフスベリ
こうした物価高や人件費の影響を受けて、現在ではほとんどすべての北欧食器の老舗メーカーは生産拠点を東南アジアに移しています。例えばARABIAやマリメッコなど超有名メーカーの製造拠点は東南アジアとなっています。北欧で販売されているARABIAやMarimekko製品は今ではタイ製です。現地で作るよりも、タイで作ってから北欧に輸入するほうが安い時代なのです。
しかし、グスタフスベリだけは伝統的な手法を守って、今でも100%スウェーデン製の手作り食器をストックホルムの自社工場で作り続けています。主要なメーカーが大規模化して東南アジアに工場を移転させて、比較的安価で世界中で売りまくるというビジネスとは一線を画しています。
(写真:今でも伝統的な手法を続けるグスタフスベリの工場)
6.高価格の理由のまとめ
まとめると、
1)賃金の高い北欧で作っている
2)輸送費や税なども含まれている
3)いまでも伝統を守ってスウェーデン国内で製造している
以上がグスタフスベリの北欧食器が高額になる理由です。それもこれも、グスタフスベリが東南アジアに拠点を移したら良いだけの話なのですが、いまだに陶芸をするための専門のスタッフを雇って19世紀から変わらない場所で製造を続けています。グスタフスベリの値段が高い理由は、伝統を維持し貫くための経費が含まれていると考えてください。
グスタフスベリのカップを手に取る機会があれば、そこで今でも脈々と受け継がれている北欧の伝統と風景をぜひ感じ取っていただきたいと思います。
グスタフスベリ社製品はこちらよりご覧ください↓↓↓