カール・ハリー・スタルハン(Carl-Harry Stålhane)── スウェーデン陶芸界の巨匠
カール・ハリー・スタルハン(1920–1990)
スウェーデン陶芸界の巨匠 ── マリエスタッドに生まれて
カール・ハリー・スタルハン(Carl-Harry Stålhane, 1920–1990)は、20世紀のスウェーデンを代表する陶芸家のひとりです。スウェーデン西部の町マリエスタッド(Mariestad)に生まれ、18歳の若さでロールストランド社に入社。当時のアートディレクターであったグンナール・ニールンド(Gunnar Nylund)のもとで絵付け職人としてキャリアをスタートしました。
パリ留学と独自の作風の確立
1940年代半ば、スタルハンは独自のストーンウェアの開発に着手します。1943年から1946年にかけてストックホルムのグリューネヴァルド美術学校(Grünewalds konstskola)で絵画と彫刻を学び、その後パリのアカデミー・コラロッシ(Académie Colarossi)にも留学。ヨーロッパの伝統的な陶芸の枠にとらわれない、東洋陶磁への深い関心がこの時期に芽生えました。
1948年には初の個展を開催。中国の宋代陶磁に着想を得た端正で均整のとれたフォルムと、モノクロームやマットな釉薬による静謐な表現で高い評価を受けました。
若き日のスタルハン(出典:Allhems Svenskt konstnärslexikon、パブリックドメイン)
ロールストランドのアートディレクターとして
30歳にしてマスターセラミストとなったスタルハンは、1953年にグンナール・ニールンドの後任としてロールストランドのアートディレクター兼チーフデザイナーに就任しました。
初期の作品はスリムで優雅なシルエットが特徴でしたが、1960年代に入ると作風は大きく変化します。より重厚で力強い造形、地元の粘土や鉱物を用いた実験的な釉薬技法により、厚くダイナミックに流れる釉薬が印象的な作品群を生み出しました。1960年にはストックホルムのギャラリー・ブランシュ(Galerie Blanche)で展覧会を開催し、創作の頂点を迎えています。
デザインヒューセットの設立
1973年、「会社がもはや陶芸家を大切にしなくなった」と感じたスタルハンは、30年以上在籍したロールストランドを離れます。ろくろ師のケント・エリクソン(Kent Ericsson)らとともに、リードヒェーピンググ(Lidköping)郊外の旧浄水場を改装し、自身の陶芸スタジオ「デザインヒューセット(Designhuset)」を設立しました。
ここでスタルハンは商業的な制約から解放され、地元の粘土と鉱物を使った自由な創作活動に没頭。1990年に70歳で生涯を閉じるまで、独自の陶芸美を追求し続けました。デザインヒューセットは現在、陶芸家やモデルメーカーを育成する学校として運営されています。
スタルハンの作品の魅力
スタルハンの作品は、東洋陶磁の美意識とスカンジナビアンモダニズムが融合した独自の世界観で知られています。とりわけ釉薬の表現に秀で、深みのある色調と繊細なグラデーションは、焼成のたびに異なる一点物の美しさを生み出しました。その作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)やヴィクトリア&アルバート博物館をはじめ、世界各地の美術館に収蔵されています。
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