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アラビア食器に「偽物」はある?〜北欧食器の基礎知識〜

アラビア食器に「偽物」はある?〜北欧食器の基礎知識〜

北欧のブランド食器「アラビア(ARABIA)」は高い人気を誇ります。それゆえに、「偽物が出回っているのでは?」と不安になる声もあるようです。しかし結論から言うと、アラビアの食器には偽物は存在しません。 本記事では、なぜ「偽物がない」と言えるのか、その理由と背景を解説します。また、多くの誤解の原因となっている「フィンランド製」と「タイ製」の違いや、ヴィンテージと復刻版の色味の差、そしてフィンランド製ヴィンテージの価値についても整理しています。最後には安心して購入するためのポイントもご紹介します。 (フィンランドの首都ヘルシンキにあるアラビア工場、かつてのアラビア食器の本拠地で現在は陶器博物館になっている)   アラビア食器に偽物は存在しません アラビアの食器に「偽物」は存在しません。一部で「ムーミンマグに偽物があるらしい」と言われることがありますが、具体的な偽物の流通事例は確認されていません。アラビア食器に偽物がある、と言及しているサイトは「こちらが正規品!」と販売サイトへと誘導するアフィリエイト記事が多いようです。   他にもインターネット上の記事で偽物の見分け方が語られることもありますが、それらの多くは正規品内の製造時期や製造国の違いを誤解したものです。アラビアの食器には必ずアラビア工場の刻印(バックスタンプ)が施されており、これはその製品が正式な品質基準を満たした本物であることを示しています。裏を返せば、このスタンプのある製品はすべて正規品であり、一見して違いがあっても偽物と決めつける必要はありません。 写真:アラビアのタイ工場の制作風景 ではなぜ「偽物があるのでは」と思われてしまうのでしょうか。大きな原因は、製造国や時代による正規品同士の差異にあります。以下では、その代表的な例である「フィンランド製」と「タイ製」の違い、そして「ヴィンテージ品」と「復刻版」の違いについて詳しく見ていきましょう。 フィンランド製とタイ製の違い:誤解の主な原因 アラビアは1873年創業のフィンランドを代表する陶磁器ブランドですが、現在では製造拠点がフィンランド国外に移っています。特に2000年代初頭から一部商品の生産が順次海外に切り替わり、2016年以降はタイやルーマニアの契約工場で製造が行われています。つまり「Made in Thailand(タイ製)」と表示されたアラビア製品も、正真正銘アラビア社の本物なのです。知らずにタイ製の刻印を見て「フィンランド製じゃないから偽物?」と疑ってしまうケースが多く、この誤解が「偽物が出回っている」という噂の主な原因となっています。 写真:タイ製は本体には製造国の表記がない。シールにDesigned in Finland Made in Thailand(デザイン:フィンランド 製造:タイ)という表記がある。   ではフィンランド製とタイ製では何が違うのでしょうか。最大の違いは製造コストと流通量、ひいては価格です。フィンランド国内で製造されていた頃のアラビア食器は、職人による手作業工程が多く含まれていました。そのため生産数が限られ価格が高くなる傾向にありました。一方、タイ製をはじめとする海外生産品は大量生産で製造されており、比較的手頃な価格で市場に出回っています。製造工程の自動化や人件費の差が価格に反映されており、「フィンランド製は高価、タイ製は安価」という傾向がはっきりと見られます。 品質面では、意外にもタイ製(および他の海外製)のほうが高い安定感があります。フィンランド製品は手作業ゆえに個体差や微細な製造上のムラ(わずかな歪みや黒点など)が見られることもありました。タイやルーマニアで作られた近年の製品は精巧で精密、貫入(釉薬の細かなひび)や歪みもなく、黒点も少ないなど仕上がりの点でフィンランド製よりも優れています。要するに、外注先の新しいタイ製品のほうがむしろ均一できれいに作られているのです。ただし、こうした工業製品としての完成度の高さと引き換えに、後述するようなヴィンテージ特有の風合いや「味わい」は薄れているとも言えます。 見分け方としては、バックスタンプの表記に注目すると良いでしょう。フィンランド製の時代の製品には「ARABIA FINLAND」や「MADE IN FINLAND」の表記がありましたが、タイ製など海外生産品では「MADE IN THAILAND」と記載されています。近年の製品には「Designed...

アラビア食器に「偽物」はある?〜北欧食器の基礎知識〜

北欧のブランド食器「アラビア(ARABIA)」は高い人気を誇ります。それゆえに、「偽物が出回っているのでは?」と不安になる声もあるようです。しかし結論から言うと、アラビアの食器には偽物は存在しません。 本記事では、なぜ「偽物がない」と言えるのか、その理由と背景を解説します。また、多くの誤解の原因となっている「フィンランド製」と「タイ製」の違いや、ヴィンテージと復刻版の色味の差、そしてフィンランド製ヴィンテージの価値についても整理しています。最後には安心して購入するためのポイントもご紹介します。 (フィンランドの首都ヘルシンキにあるアラビア工場、かつてのアラビア食器の本拠地で現在は陶器博物館になっている)   アラビア食器に偽物は存在しません アラビアの食器に「偽物」は存在しません。一部で「ムーミンマグに偽物があるらしい」と言われることがありますが、具体的な偽物の流通事例は確認されていません。アラビア食器に偽物がある、と言及しているサイトは「こちらが正規品!」と販売サイトへと誘導するアフィリエイト記事が多いようです。   他にもインターネット上の記事で偽物の見分け方が語られることもありますが、それらの多くは正規品内の製造時期や製造国の違いを誤解したものです。アラビアの食器には必ずアラビア工場の刻印(バックスタンプ)が施されており、これはその製品が正式な品質基準を満たした本物であることを示しています。裏を返せば、このスタンプのある製品はすべて正規品であり、一見して違いがあっても偽物と決めつける必要はありません。 写真:アラビアのタイ工場の制作風景 ではなぜ「偽物があるのでは」と思われてしまうのでしょうか。大きな原因は、製造国や時代による正規品同士の差異にあります。以下では、その代表的な例である「フィンランド製」と「タイ製」の違い、そして「ヴィンテージ品」と「復刻版」の違いについて詳しく見ていきましょう。 フィンランド製とタイ製の違い:誤解の主な原因 アラビアは1873年創業のフィンランドを代表する陶磁器ブランドですが、現在では製造拠点がフィンランド国外に移っています。特に2000年代初頭から一部商品の生産が順次海外に切り替わり、2016年以降はタイやルーマニアの契約工場で製造が行われています。つまり「Made in Thailand(タイ製)」と表示されたアラビア製品も、正真正銘アラビア社の本物なのです。知らずにタイ製の刻印を見て「フィンランド製じゃないから偽物?」と疑ってしまうケースが多く、この誤解が「偽物が出回っている」という噂の主な原因となっています。 写真:タイ製は本体には製造国の表記がない。シールにDesigned in Finland Made in Thailand(デザイン:フィンランド 製造:タイ)という表記がある。   ではフィンランド製とタイ製では何が違うのでしょうか。最大の違いは製造コストと流通量、ひいては価格です。フィンランド国内で製造されていた頃のアラビア食器は、職人による手作業工程が多く含まれていました。そのため生産数が限られ価格が高くなる傾向にありました。一方、タイ製をはじめとする海外生産品は大量生産で製造されており、比較的手頃な価格で市場に出回っています。製造工程の自動化や人件費の差が価格に反映されており、「フィンランド製は高価、タイ製は安価」という傾向がはっきりと見られます。 品質面では、意外にもタイ製(および他の海外製)のほうが高い安定感があります。フィンランド製品は手作業ゆえに個体差や微細な製造上のムラ(わずかな歪みや黒点など)が見られることもありました。タイやルーマニアで作られた近年の製品は精巧で精密、貫入(釉薬の細かなひび)や歪みもなく、黒点も少ないなど仕上がりの点でフィンランド製よりも優れています。要するに、外注先の新しいタイ製品のほうがむしろ均一できれいに作られているのです。ただし、こうした工業製品としての完成度の高さと引き換えに、後述するようなヴィンテージ特有の風合いや「味わい」は薄れているとも言えます。 見分け方としては、バックスタンプの表記に注目すると良いでしょう。フィンランド製の時代の製品には「ARABIA FINLAND」や「MADE IN FINLAND」の表記がありましたが、タイ製など海外生産品では「MADE IN THAILAND」と記載されています。近年の製品には「Designed...

マリアンヌ・ウェストマンの生涯と傑作モナミ:伝説の北欧デザイナーを徹底解説

マリアンヌ・ウェストマンの生涯と傑作モナミ:伝説の北欧デザイナーを徹底解説

マリアンヌ・ウェストマン(Marianne Westman、1928年6月17日 - 2017年1月15日)は、スウェーデン中部ダーラナ地方のファルンで生まれ育ちました。ファルンは銅山や伝統工芸のダーラナホースで知られる地域で、その豊かな自然環境はウェストマンの感性に大きな影響を与えました。幼少期から絵やものづくりに親しみ、創造性を育んだ彼女は、この環境で培われた美的感覚を後年のデザインに色濃く反映させることになります。

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【北欧ミッドセンチュリーの巨匠】スティグ・リンドベリの生涯〜人気作「ベルサ」と家族の絆〜

【北欧ミッドセンチュリーの巨匠】スティグ・リンドベリの生涯〜人気作「ベルサ」と家族の絆〜

スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg、1916〜1982)は、20世紀のスウェーデンを代表するデザイナーです。陶芸界の「プリンス」とも称される存在で、1937年に名門グスタフスベリ社(Gustavsberg)の製陶所に入社し、同社の人気を支え続けました

【北欧ミッドセンチュリーの巨匠】スティグ・リンドベリの生涯〜人気作「ベルサ」と家族の絆〜

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長くつ下のピッピ

リサ・ラーソンと『長くつ下のピッピ』制作秘話

1967年、ストックホルム郊外のグスタフスベリ(Gustavsberg)陶磁器工房で、小柄な女性陶芸家と世界的に有名な児童文学作家が肩を並べて一つの小さな陶器人形を見つめていました。 陶芸家はリサ・ラーソン、作家は『長くつ下のピッピ』の生みの親アストリッド・リンドグレーン。

リサ・ラーソンと『長くつ下のピッピ』制作秘話

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スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソン(Lisa Larson)の生涯と作品

スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソン(Lisa Larson)の生涯と作品

リサ・ラーソン(本名:インガ・リサ・アルハーゲ)は、1931年9月2日、スウェーデン南部のスモーランド地方・ヘルルンダ(Härlunda)で生まれました。2歳のときに母を亡くし、製材所を営む父とともに暮らしながら、幼い頃から木の端材で彫刻を作ったり、近所の風景をスケッチして売ったりと、豊かな想像力を発揮していたといいます。

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リサ・ラーソン(本名:インガ・リサ・アルハーゲ)は、1931年9月2日、スウェーデン南部のスモーランド地方・ヘルルンダ(Härlunda)で生まれました。2歳のときに母を亡くし、製材所を営む父とともに暮らしながら、幼い頃から木の端材で彫刻を作ったり、近所の風景をスケッチして売ったりと、豊かな想像力を発揮していたといいます。

フィーカ:スウェーデン式“フリータイム”とは

Fika:瑞典语“空闲时间”

北欧国家瑞典以其高标准的福利和注重工作与生活平衡的独特文化吸引了全世界的关注。虽然许多员工在夏季平均享受五周的假期,但该国以高效的劳动力为特点,这有助于保持经济增长和企业竞争力。

Fika:瑞典语“空闲时间”

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