リサ・ラーソンがグスタフスベリ社で1958年にデザインした大きな動物園（Stora Zoo）というシリーズの猫（Katt）の陶器像です。リサ・ラーソンが陶芸家としてデビューした当時に製作した最初期の作品となります。
本作はおそらく大きな動物園の発売年の1958年以前に作られたものです。通常版と異なり、底部の空気穴がほとんどなく、おなか側にはスタジオの型式番号の一部が書かれています。全体の色味はざっと黒い釉薬を塗って横引きに線が入っており、ところどころ陶土をえぐって白い地肌を見せています。表情の線は色味がかなり薄く、まだ製品としてのコンセプトが定まっていなかったことを示しています。
通常版に比べて全長はわずかに大きく、釉薬のかかり具合が独特で美しい存在感があります。リサ作品のユニークピースの猫は同様の釉薬のかかり具合のものが多いため、本作はおそらくリサ・ラーソン自身の手によって制作されたものと推測します。
通常版の大きな動物園の猫はこちらを御覧ください。
■詳細
メーカー：Gustavsberg / グスタフスベリ
デザイナー：Lisa Larson / リサ・ラーソン
シリーズ名：Stora Zoo / 大きな動物園
作品名：Katt / 猫
年代：1958年以前（推定）
生産国：スウェーデン
コンディション：★★★★★（5：完品）
割れや欠けや貫入がない完品です。全体的にところどころ釜で焼成中に表面の釉薬が弾けた跡が見られます。作品の特徴としてご理解ください。
■サイズ
横幅32.5cm 高さ11.5cm 奥行き9cm
リサ・ラーソン（Lisa Larson）
リサ・ラーソン（Lisa Larson，1931〜2024年）
スウェーデンを代表する世界的な陶芸家。スウェーデン南部スモーランド地方にあるクロノベリ（Kronoberg）郡のエルムフルト（Älmhult）地区にある人口500人ほどのハールンダ（Härlunda）という村の生まれ。
幼い頃は服飾デザイナーを志すが、ヨーテボリ芸術大学に入学した後は陶芸を学ぶ。ある時コンペでスティグ・リンドベリに見い出されたことがきっかけとなり、1年間の試用期間を経て、グスタフスベリ（Gustavsberg）社のデザイナーとして正式に入社する。直後の1955年にはLilla zooシリーズを発表し、1964年にはライオン像で有名なAfrikaシリーズを考案している。
リサ・ラーソンはグスタフスベリに留まらず、ホガネス（Höganäs）社や国内小売大手のオーリエンス（Åhléns）社、ドイツの陶器メーカーのローゼンタール（Rosenthal）社にもデザインを提供している。1979年にグスタフスベリを退社した後は、専属ではなく企業と随意契約をするフリーランス芸術家という立ち位置で、自由に創作活動を続けながら各方面で活躍していく。1979年と1981年には東京の西武百貨店で個展を開催しており、81年の個展には述べ7万人が来場したと言われる。